タイムラインで見かけて読んでみたら、思った以上にいい本だった
https://www.amazon.co.jp/dp/4532110238
序章 組織デザインとは何か
- 組織的とは
- 役割を明確に分化させてそれぞれの専門性を活用し
 - それらが互いに適切な場所とタイミングで活動を展開することで、個々人の能力の単純集計以上に効果を発揮でき
 - 役割を分化させることを分業と呼び、それらの多様な役割を時間的、空間的連動を確保する努力を調整と呼ぶ場合
 - 分業と調整という特徴をもつ活動を「組織的」と評する
 
 
2. 組織デザインの手順とポイント
- 「組織を設計する」と言う作業は、分業を設計し、人々の活動が時間的・空間的に調整されたものになるような工夫をを施すことであり、そのようにできあがった分業と調整手段のパターンが組織デザインである
 - 分業のタイプと目的、調整手段の特徴に通じてないと効果的なデザインにならない
 
1. 組織形態の基本形
- 機能別(職能制)組織
- Functional Structure(Form)
 - 個々の組織メンバーは同じ専門の人間と対話しながら、自分たちの専門を通じて会社に貢献することを最大のテーマとして仕事を進めることになる
 
 - 事業部制組織
- Multi-Divisinao Structure(Form)
 - Business Unit とも呼ぶ
 - 個々のメンバーが共有するのは同じ製品・市場
 - 個々の製品・市場への適応が優先される
 
 - マトリクス組織
- Matrix Organization Form
 - 製品・市場への適応と機能統合によるメリットの両方盛り込む
 - 大きな意思決定のたびに、製品・市場の要求と機能部門の要求が対立する可能性があり、そのたびごとにどちらの軸を優先するか、トップが意思決定を行う
 - ダイナミックに2つの要求をバランスさせる意図を持ってマトリクス組織は採用される
 - 実際は製品・市場への適応が優先されるケースが多い印象
 
 
2. 基本型のバリエーションを理解する
- 組織形態の3つの基本形は頭の中に存在する理想型であり、現実の組織は多かれ少なかれ逸脱している
- 現実の組織は多様な工夫を加えた上での中間形態
 
 - 一部事業部制
 - 事業本部・カンパニー制
- 一つの独立した会社のように機能を持つ
 
 
2. 分業のタイプ
パン屋の例
- 垂直分業
- 考える人と実行する人が分かれる
 
 - 水平分業
- 機能別分業
- 焼く、こねる、販売で作業者分かれる
 - 組織の生産力は歩留まりの最小値となる(TOC)
 - どこかの工程がストップすると全体のアウトプットが出なくなる
 - 直列型、並列型共に。
 - 協働する意識が芽生えることは通常起こりにくい
 
 - 並行分業
- 全員が焼く、こねる、販売までの全ての作業をやる
 - 競争促進的(市場的)
 
 
 - 機能別分業
 - 一般に、分業すると、その仕事を切れ目にして異なる組織文化が発達する
- たとえもし協働しないといけないとしても、分割したこと事態が逆に協働を阻害する可能性が出てくる
 - 調整の努力が必要
 
 - 計画のグレシャムの法則
- ルーチンワークはノン・ルーチンワークを阻害する
 - 毎日忙しいと言ってつまらない仕事に追われてる人は、仕事のやり方そのものを根本的に考え直すことを後回しにする
 
 
3. 分業がもたらすデメリット
- 働く人の意欲低下
 - 調整・統合の難易度アップ
 - 組織ごとに異なる目標を追う可能性
 - 利害関係の発生
 - 時間に対する考え方
 
3. 標準化を進める
6. 戦略シナリオの共有
- 戦略シナリオを浸透させるのが難しい話
 - 戦略スタッフの洗練作業の過度な洗練による組織活動の不活性化を「分析麻痺症候群」と呼ばれる
 
4. 作業の流れ
当然のようにトヨタ生産方式、リーン、TOCが出てきて驚く
1. バランスのとれた生産工程
- TOCの話
 - 「第三の解決方法」の「尻上にバランスさせる」はデリバリー(リリース・デプロイ)を安定、高速化させることに該当すると感じた
 
5. ヒエラルキーのデザイン
- ヒエラルキーは例外処理のために存在する
 - ヒエラルキーが存在する方が調整のコストは安い
 
2. 事前と事後の切り分け
- 事前の調整手段として標準化、事後の調整手段としてヒエラルキー
 - 不確実性
- 熟練度の高いメンバーが集まる組織には、ヒエラルキーは極めて単純なものを用意すればいい
 - まったくの新人でもなく、熟練者でもない、中間的な状況が最もヒエラルキーが必要
 
 - 管理の幅を広げるには
- 組織メンバーの知識、熟練水準を高める
 
- 標準化を進める
 
- 管理職の能力を開発する
 
 - 判断能力のある下位層の構築
- 確保(採用)
 - 育成
 - 構造的工夫
 
 - 例外処理能力の開発
- いわゆる育成
 - アジェンダが必要
- どのような能力を開発するかのロードマップ
 
 
 - 例外処理能力の補強
- 職務の分割
 - いわゆる権限移譲
 - パワー関係の変化が起こる可能性がある
- パワーを手に入れたスタッフが自分に有利になるように物事を進める可能性
 - 判断の選択を管理者におくことでコントロール
 
 
 
5. グルーピング原則と事業部制
- 事業部制組織のような準分解可能な組織は「ミスを許容する組織」になりやすい
- 事業部の依存関係が弱く、1つの事業部のミスが他の事業部の不利益につながりにくいため
 
 - 巨大な機能別組織では、失敗に敏感な風土が発達してしまう
 - 職能横断組織ではあるが、プロダクトの相互依存性が強いケース
- 調整コストが高い
 - 専門性、自律性が高い、プロダクト横断的な活動を行える人材が必要になっている
 
 
6. ヒエラルキーのその他の意義
- 設計された責任感
 - キャリアパス
 - 問題点
- 民主主義化された社会ではヒエラルキーは好まれない
 - 民主主義的な秩序を演出することはできる
 - ヒエラルキーに入れない人の不満
- 根源的な解決策は存在しない
 - それを解決するために、無駄な役職がつくられたりする
 
 
 
6. 水平関係とその他の追加的措置
- 目的
- 情報処理負荷削減
 - 情報処理能力拡充
 
 
3. 水平関係の創設
- 直接折衝
- 担当者同士が直接連絡すること
 - 最もシンプルで最も実用的
 - 直接折衝を生み出すインフラ
- 「弱い関係」を張り巡らさせる設計、施策が低コスト
 
 - デメリット
- あまりにも頻繁に発生する問題の処理には不向き
- 有能な人物に折衝が偏る
 
 - 本来無駄な仕事をさせてはいけない人材に、無駄な仕事もそうでない仕事が殺到し、ボトルネックとなり組織全体のパフォーマンスが低下する
 - 有能な人物でなくても、相談しやすい相手に調整が増えることで、組織全体で見ると最適でない解決策が追求されることがある
 
 - あまりにも頻繁に発生する問題の処理には不向き
 
 - 連絡会、研究会(定例)
- 意思決定者がいないと有効に機能しない
 - 形骸化、巨大化に注意
 
 - プロダクト・マネージャーの設計パラメータ
 - マトリクス組織
- マトリクス組織はヒエラルキーに満ちた組織であると言える
- プロダクトと市場のヒエラルキー
 
 - ヒエラルキーの補強
- 機能別のヒエラルキーを製品別のヒエラルキーで補強
 - 製品別のヒエラルキーを機能別のヒエラルキーで補強
 
 - 市場への対応(機能開発)を重視しすぎると、非常に短期的な視野に陥る危険性がある
 - 機能部門の長期的な蓄積と市場への端的な対応のコンフリクトを解消するのがマトリクス組織の設計意図
- 解決まで支援してるわけではない。解決して本当に機能してることになる
 
 - コンフリクトに対応するには
- 問題直視
 
- 強権
 
- 妥協
 
- 問題回避または問題糊塗
 
 - マトリクス組織は機能部門長と製品・市場マネージャーのパワーバランスの取り方にも考慮が必要
 - 妥協や問題回避が行われた場合、問題は解決せずに現場の不満がたまる
- たまに現場が解決する
 
 - 問題直視も強権も期待できない組織でマトリクス組織を設計すると、問題解決のほとんどをミドルが行い続けることになる
 - マトリクス組織を設計する場合には、問題直視と強権を実行できる管理者が揃っていることを見定めることが必要
 
 - マトリクス組織はヒエラルキーに満ちた組織であると言える
 
4. 終わりに
- 命令一元化の原則
- どの部下も複数の上司から命令を受けてはならない
 
 - 組織形態そのものが問題を解決してくれることはない
 - マトリクス組織の場合、マネージャー的役割の人が多くなるので、最後に決める人がわからなくなりやすくなる
 - 日頃から直接折衝で徹底議論できるようなコミュニティ形成に尽力し、いざいという時に問題直視や強権を発動
- それでも関係を傷つけないようにする人材マネジメントの努力
 
 - すべての問題を組織デザインで解決しようとする考え方は、全く動かない組織を産み出し、企業を混乱に陥れる
 
終章
- 世の中の組織デザインに対する過度な期待
- 「最新の組織デザイン」という幻想
 
 - 「組織が遅い」「組織が重い」という問題に直面している場合、原因はヒエラルキーよりも「決めるべき上司が決めてくれない」ことが多い
 - 理想の民主的な組織を追うのを放棄して、ヒエラルキーを単純なものにし、重要なポストに決断できる人材を置く方が重要
 
人材育成への配慮
- コア人材が長期的に大きく育つか否かが、実は日常的なオペレーションを処理する構造によって大きく左右される可能性がある
 - 考える余地の重要性
 - ただし、人材育成のためにオペレーション効率を下げすぎると、市場競争で敗北することもある
 - はじめに効率的な組織デザインを考えた上で、最後に人材育成に配慮してデザインの補正を行う方がいい
 
戦略形成への配慮
- コア人材が「当社の課題」だと認識したことが会社の戦略になることが多い
 - 社内の人材プールに依存して戦略を策定していると、戦略が内向きのコンセンサス形成に引っ張られて非合理になる危険性がある
 - これを避けるために、トップはおおまかな戦略的方向付けを行う必要がある
- しかし、戦略的方向付けは白紙から描かれるわけではなく、コア人材からのインプット含めてそれを描く
 
 - コア人材の創発する具体的な戦略に組織デザインが影響を及ぼす
 - コア人材は思考時間を与えることが必要
 - 戦略家に多用な情報が集まるようにすることが重要
 - 相互作用